土地や一戸建て住宅、マンションといった不動産などの分割しにくい財産を相続する場合に「代償分割」という方法を用いることがあります。
あまり聞きなれない「代償分割」という方法ですが、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
今回は「代償分割」とはどのような方法なのかに注目し、メリット・デメリットをご紹介するとともに、用いるうえでの注意点や相続税の計算方法についてもお伝えしたいと思います。
これから相続を控えている方はぜひご参考にしてください。
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弊社へのお問い合わせはこちら代償分割とはどのような方法?
遺産の分け方を話し合いによって決めることを「遺産分割」といい、主に不動産など分割が難しい財産を相続した際によく用いられます。
遺産分割の方法には次の4つがあります。
●現物分割:遺産を売却などせずそのまま相続する方法
●代償分割:相続人の中の一人が遺産をすべて相続し、他の相続人に代償金を渡す方法
●換価分割:遺産を売却して現金化し、それを分割して相続する方法
●共有分割:遺産を複数人で共有する方法
つまり「代償分割」とは、4つの遺産分割方法の中のひとつなのです。
代償分割とは
では代償分割とは具体的にどのような方法なのでしょうか。
代償分割とは、法定相続人のうち代表して1人が遺産を取得し、その他の相続人へ代償金を支払う、もしくはお金以外の財産を交付することによって清算する遺産分割の方法です。
具体的に次の例でみてみましょう。
●相続人:長男、次男、三男
●相続財産:自宅不動産(2,000万円)、現金(1,000万円)
自宅不動産を長男が相続し、次男と三男は現金を500万円ずつ相続したとします。
本来であれば相続財産の合計3,000万円を兄弟3人で均等に分けるため、一人当たり1,000万円分の遺産を相続する権利があります。
しかし上記の相続内容では長男が2,000万円分を相続していることになるため、長男が次男、三男へ不足分の500万円をそれぞれに現金等で代償として渡すことで平等な遺産分割がおこなえる、ということになります。
代償分割のメリット・デメリットとは
次に、代償分割のメリット・デメリットをみてみましょう。
代償分割のメリットとは
代償分割を用いることで、次のようなメリットが得られます。
遺産分割の公平性が保てる
上記の例のようにとくに遺産の多くを不動産が占めている場合では、不動産を相続した相続人とその他の現金等を相続した相続人との間で金額が不公平になるケースがよくあります。
上記の例で考えると長男が評価額2,000万円の不動産を、次男と三男が1,000万円の現金をそのまま分けて相続した場合(現物分割)、長男だけ多く相続したこととなり金額的な公平性が失われてしまいます。
しかし代償分割を行えば、それぞれ1,000万円ずつ相続することが可能となります。
このように、代償分割を用いると遺産分割の公平性を保つことができるというメリットがあります。
相続した不動産を売却せずに済む
代償分割には、不動産を売却しなくて済むというメリットもあります。
不動産を含めた遺産を公平に分割するには、不動産を売却して現金化して分ける方法(換価分割)もあります。
しかし親や自分が長年住んでいた家であったり、思い入れのある家や不動産であれば売却したくないと思ったりすることもあるでしょう。
よくあるケースとして、被相続人と同居していた配偶者や子どもなどの相続人が引き続き住み続けたい場合があります。
この場合、売却してしまうとその人達の自宅が奪われ住む場所がなくなってしまうという事態を招いてしまいます。
その他にも、被相続人の住居や建物などの不動産で農業や事業等を行っており、その家業を継いでいく場合にも売却は避けたいところです。
また、不動産の立地条件などによっては、将来的にその不動産の価格が上がる可能性があります。
売却せずに財産として持っていれば、そのような将来の値上がり益を得ることができるかもしれません。
このようにさまざまな理由で不動産を売却したくない場合でも、代償分割を用いれば家を売却することなく残しておくことができます。
不動産の共有名義を避けられる
上記の例の場合、不動産を兄弟3人で共有名義として相続する方法もあります。
しかし共有名義の不動産は売却時やあらゆる面で制約が大きく、あとあとトラブルの種になりかねないため、できれば避けたい方法です。
このような場合も代償分割であれば共有名義を避けて相続できるというメリットがあります。
節税につながる
もしも相続した不動産を売却して売却益が出た場合、売却益=譲渡所得としてとらえられるため、譲渡所得税がかかってきます。
また、不動産のまま相続した場合、相続した土地の評価額を最大8割まで削減できる「小規模宅地等の特例」を利用することができるため、結果的に相続税の節税につながります。
さらには相続税の計算に用いる不動産の評価額は、市場の評価よりも低めである場合がほとんどです。
そのため、現金を相続するよりも不動産で相続したほうが、相続税が安くなる傾向にあります。
代償分割のデメリットとは
では代償分割によるデメリットにはどんなことがあるのでしょうか。
代償金のための資金が必要である
不動産を相続した相続人がその他の相続人へ支払う代償金は土地や建物、権利などでも支払いは可能ですが、基本的に現金で支払う場合がほとんどです。
そのため、不動産を相続した相続人に相応の資金力が必要となってしまうのはデメリットといえます。
不動産の評価額によってはトラブルになる可能性がある
代償金を支払うにあたって、不動産の評価をおこないます。
しかし評価方法にもいくつかあるため、評価額に納得できない場合は代償金の額が決まらず、話がまとまらないといったトラブルに発展する可能性もあります。
税金が発生する可能性がある
支払う代償金が多すぎたり手続きに不備があったりする場合、贈与税などの税金が発生する可能性があるというデメリットがあります。
代償分割では要注意!遺産分割協議書と相続税の計算方法
代償分割による遺産分割では、基本的に贈与税はかかりません。
ただし、遺産分割協議書には必ず「代償分割をした旨」を記載しておかなければならないという注意点があります。
これは、支払った代償金が相続とは無関係な「贈与」としてみなされ、贈与税が課される可能性があるからです。
そして、こういった記載が必要な「遺産分割協議書」とは、相続人の間で遺産分割の内容が決定したら必ず作成するものです。
遺産分割協議にて代償分割を選択した場合は、遺産分割協議書に必ず記載するようにしましょう。
相続税の計算方法
一方で、代償分割による遺産相続でも、通常の相続と同様に相続税は発生します。
相続税の計算方法には次の2つがあります。
相続税評価額を使った計算方法
●代償金を支払った人:相続税額=相続税評価額―代償金額
●代償金を受け取った人:相続税額=相続税評価額+代償金額
代償分割時の時価を使った計算方法
●代償金を支払った人:相続税額=相続税評価額―代償金額×(相続税評価額÷代償分割時の時価)
●代償金を受け取った人:相続税額=相続税評価額+代償金額×(相続税評価額÷代償分割時の時価)
トータルの相続税額は変わりませんが支払いの内訳は変わってくるため、自分たちが用いた評価額の算出方法で計算しなければなりません。
まとめ
今回は遺産分割の方法のひとつである「代償分割」について、内容やメリット・デメリット、相続税の計算方法についてご紹介しました。
代償分割は、相続財産の多くを分割が難しい不動産が占めている場合にはおすすめの分割方法といえます。
ただし、代償金を支払う相続人に資金力が必要であったり、遺産分割協議書の記載に気を付けなければならなかったりというような注意点もあります。
方法によっては税金が増えてしまうケースもあるため、代償分割を検討される場合は税理士などの専門家へ相談しながら判断すると良いでしょう。
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