2013年の相続税法改正により、2015年から相続税の基礎控除が縮小され、2億円を超える相続財産については税率も変更されました。
これは、相続税評価額の高い都心部で賃貸経営をおこなうオーナーにとって、かなり影響の大きな問題になります。
今回は、不動産を相続するときの節税対策としての法人化について解説します。
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不動産を相続するための法人化とは、個人が法人を設立して、自分が所有している不動産を法人の所有に変えることをいいます。
法人とは
法人とは、法律上人格が認められたものであり、代表者などの自然人(人間)とはまったく別の存在になります。
法人が所有する財産は、その出資者である個人の財産とは無関係とされるため、実際に会社として事業をしていなくても、節税目的で法人化することはあります。
では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
法人化するメリット①相続財産を減少させることができる
被相続人がアパートやマンションなどの賃貸経営をしていた場合、その評価額によっては多額の相続税がかかってしまう可能性があります。
法人と個人は全く別の存在であるため、不動産の名義を法人にしておくことで、相続財産を減少させることができます。
うまくいけば、相続財産の総額を基礎控除額の範囲内、または、それに近づけておくことが可能になります。
法人化するメリット②所得税・住民税の節税ができる
所有する不動産から賃貸収入を得ている場合、家族を役員とすることで、法人を通して収入を家族に分散させることができます。
所得税・住民税は累進課税のため、実効税率を下げることで節税につながります。
法人化するメリット③家賃収入を給与所得にできる
家賃収入は不動産所得のため、事前に経費を差し引いて計算することから、経費以上の控除はありません。
法人化して、家族を法人の役員としておくと、家賃収入は家族に給与として支払われることになります。
つまり、すでに経費を差し引いて計上した家賃収入に、給与所得控除が適用できます。
法人化するメリット④相続税対策になる
相続税の課税対象は、不動産だけでなく現金なども含めた全財産となります。
つまり、家賃収入を使わずに貯めておくと、相続財産は増える一方です。
法人化して家族に分散させておけば、相続財産の増加を抑えることが可能になります。
また、家族もそのお金を将来の相続税の納税資金として蓄えておくことができます。
法人化するメリット⑤法人としての税制上のメリットがある
法人には、さまざまな制度上のメリットがあります。
まず、生命保険や共済に法人として加入することができます。
また、その年に生じた損失を翌年以降の所得から控除できる「損失繰越控除」は、個人の場合3年間となりますが、法人の場合は9年間となります。
不動産を相続するために法人化するデメリット

法人を設立することで、税制上さまざまなメリットがあることがわかりました。
では、法人化のデメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
デメリットとは、法人設立の際のコストと、法人を経営していくうえでのコストになります。
収益とコストの額によっては、期待した節税効果は見込めないということもあり得ます。
具体的にどのようなコストや手間がかかるのかを見ていきましょう。
法人化するデメリット①事業でなければならない
賃貸収入を得ているなど、すでに事業がある場合は問題ありません。
しかし、何も事業をおこなわないのに、法人を設立するということはできません。
そのため、更地の土地などを法人の所有とするといった場合は、駐車場にして貸し出すなど、何らかの事業を立ち上げなければなりません。
法人化するデメリット②資本金を用意しなければならない
法人を設立するためには、資本金を用意しなければなりません。
ただし、2006年に最低資本金制度が撤廃されたため、1円以上で法人を設立することができます。
ただし、合同会社の場合は社員のすべてが出資者でなければなりません。
法人化するデメリット③法人設立のための手続きや費用が必要
法人を設立するためには、法律に基づくさなざまな手続きが必要になります。
まず、商号や事業の目的、会社の基本的なルールを記載した「定款」とうう書類を作成し、公証人役場で認証を受けます。
次に資本金を用意し、法務局で登記手続きをおこないます。
その際は、以下のような費用がかかります。(株式会社の場合)
●定款の認証手数料…50,000円
●法人設立のための登録免許税…150,000円
●定款に貼る収入印紙代…40,000円
●定款の謄本代…2,000円
合計で24万2,000円が実費として必要になります。
また、電子定款を利用した場合は、収入印紙代が不要になるため、20万2,000円となります。
なお、これらの手続きを司法書士に依頼した場合は、その報酬が加算されることになります。
法人化するデメリット④登記費用や不動産取得税がかかる
法人を設立したら、不動産の所有権を個人から法人へ移転することになります。
その際、登記費用として登録免許税や司法書士手数料がかかります。
また、取得した不動産の評価額に応じて、不動産取得税がかかることになります。
法人化するデメリット⑤法人住民税の支払いがある
法人に課される税金には主に3つあり、それは「法人税」「住民税」「事業税」です。
法人税が国税であるのに対して、住民税と事業税は、会社の所在地の地方自治体に納付する「地方税」に分類されます。
住民税は、個人に対して課される住民税と区別して「法人住民税」とも呼ばれます。
法人税と事業税は、利益に対して課税される税金であるため、給与や役員報酬として家族に支払うことで圧縮することが可能です。
一方、法人住民税は法人税額を課税標準とする「法人税割」と、所在するだけで課税される「均等割」の2層構造になっており、法人住民税の均等割の最低金額は7万円程度となっています。
この「均等割」部分の7万円は、たとえ赤字でも毎年支払う必要があります。
法人化するデメリット⑥毎年税務申告をする必要がある
法人の場合、毎年税務申告をする必要があります。
そのための事務作業が必要になるだけでなく、税理士報酬が発生する点も重要なポイントです。
不動産を相続するために法人化する際の注意点

ここでは、相続税対策として法人を設立する際の注意点やポイントについて説明します。
法人の形式
法人といっても、さまざまな形式があります。
株式会社・合同会社・一般財団法人・一般社団法人などがあり、それぞれにメリットやデメリットがあるため、専門家に相談して慎重に判断しましょう。
資本金をどうするか
法人設立時には、資本金をいくらにするかを決めなければなりません。
資本金1,000万円以上の法人は消費税の申告が必要になるため、1,000万円未満に設定しておくことがおすすめです。
株主や役員を誰にするか
相続税対策で法人を設立するときの注意点として、元々不動産を所有していた人の扱いをどうするかということがあります。
不動産の所有者が株主となる場合、被相続人の所有する株式が相続財産に含まれることになるため、節税効果が薄れる可能性があります。
一方、元々不動産を所有していた人が株主になっていないと、法人の経営は株主である相続人が決定権を持つことになりますので、元々の所有者の意思が反映されなくなる危険性性があります。
不動産経営には、建物の修繕や建て替えなどに費用がかかります。
資金が足りない場合は、抵当権を設定して金融機関からお金を借りることもあるため、そうした判断に自分の意思が反映できないことはリスクとなります。
まとめ
不動産の相続税対策のための法人化について、メリットやデメリット、注意点などをご紹介しました。
法人化するかどうかは、不動産から得られる収益や推定される相続税に対して、法人設立のためにかかるコストと、得られる節税効果などを分析し、慎重に判断する必要があります。
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